フローチャート
建築設備設計基準(令和3年版) P.72~77
「高圧又は特別高圧で受電する需要家の高調波抑制対策ガイドライン」に基づき行う。
図 高調波流出電流の算出及び高調波抑制対策フローチャート
手順①検討要否判定
・高圧受電
・ビル
・進相コンデンサが全て直列リアクトル付
・換算係数$Ki=1.8$を超過する機器なし
以上の4項目に該当すれば高調波対策は検討終了となる。
[補足]
□低圧受電は高調波対策の検討不要。
□「ビル」とは一般事務庁舎など一般的な建物用途が該当する。
(主たる使用機器が空調や照明である、事務所・ホテル・店舗・学校・病院等)
電力会社へガイドライン上の「ビル」の該当するか確認しておいた方が良い。
□進相コンデンサの位置は低圧・高圧問わない。
□換算係数$Ki$は採用する機器メーカーへ問合せする。
多く出回っている業務用エアコンは大抵$Ki=1.8$を超過しない仕様となっているがチラーなど
大型の機器になると超過している機器が多い。アクティブフィルターなど対策することで$Ki=1.8$
以下とすることができる。(回路分類10として取り扱う)
4項目に該当しない場合 ②等価容量の計算・等価容量による判定 へ進む。
手順②等価容量の計算・等価容量による判定
$Po=\sum(Ki・Pi)$
$Po$:等価容量[kVA](6パルス変換装置換算容量)
$Ki$:換算係数
$Pi$:各機器の入力定格容量[kVA]
高圧受電かつ進相コンデンサが全て直列リアクトル付の場合は$Po$の値に$0.9$を乗じる。
$Po$が限度値以下となれば検討終了となる。
受電電圧 [kV] | 限度値 [kVA] |
---|---|
6.6 | 50 |
[補足]
□高調波発生機器「JISC61000-3-2-2005」の適用対象となる機器は除外できる。
(1相当たり20A以下の機器)
→等価容量$Po$の算出は20A超過の機器のみで算出する。
入力定格容量$Pi$は原則、実際に採用されている(されるであろう)機器の仕様書を参考に入力するが不明な場合は下記の表の値を採用する。
電動機定格出力 [kW] | 入力定格容量Pi [kVA] |
---|---|
0.2 | 0.35 |
0.4 | 0.57 |
0.75 | 0.97 |
1.5 | 1.95 |
2.2 | 2.81 |
3.7 | 4.61 |
5.5 | 6.77 |
7.5 | 9.07 |
11 | 13.1 |
15 | 17.6 |
18.5 | 21.8 |
22 | 25.9 |
30 | 34.7 |
37 | 42.8 |
45 | 52.1 |
55 | 63.7 |
$Po$が限度値を超過した場合「特定需要家」に該当し ③高調波流出電流による判定 へ進む。
手順③高調波流出電流による判定
〇各次数高調波電流上限値の算出
改修工事の場合は実際の契約電力をヒアリングする。
新築工事等、契約電力を想定する場合は電気事業者との協議等によるが不明な場合は受変電設備の総容量に係数を乗じた値とする。
各次数高調波流出上限値[mA]=次数毎の高調波流出電流上限値[mA/kW]×契約電力[kW]
受電電圧[kV] | 次数毎の高調波流出電流上限値[mA/kW] | |||||||
5次 | 7次 | 11次 | 13次 | 17次 | 19次 | 23次 | 23次以降 | |
6.6 | 3.5 | 2.5 | 1.6 | 1.3 | 1.0 | 0.9 | 0.76 | 0.70 |
表 契約電力1kW当たりの高調波流出電流上限値
最初の50kWにつき | 80% |
次の50kWにつき | 70% |
次の200kWにつき | 60% |
次の300kWにつき | 50% |
600kWを超える部分につき | 40% |
[補足]
□受変電設備において第3調波電圧は三相平衡回路において相殺されるため、第5調波以上の高調波についての対策を講じることが一般的。この対策として力率改善用コンデンサにはコンデンサ定格容量の6%の直列リアクトルを挿入することが一般的。これにより電圧波形のひずみを改善し、突入電流の抑制を図る効果がある。
〇高調波電流発生量の算出
$In=I1・\frac{%In}{100}・k・β・γn$
$In$:各次数高調波電流[mA]
$I1$:受電電圧換算の定格電流[mA]
$%In$:高調波電流発生量[%]
$k$:高調波発生機器の最大稼働率
$β$:契約電力による補正率
$γn$:直列リアクトル付進相コンデンサによる低減係数
契約電力[kW] | 補正率 β |
---|---|
300 | 1.0 |
500 | 0.9 |
1000 | 0.85 |
2000 | 0.8 |
ア 受電電圧換算の定格電流
三相の場合:$I1=Pi・\frac{1000}{\sqrt{3}・受電電圧[kV]}$
単相の場合:$I1=Pi・\frac{1000}{受電電圧[kV]}$
イ 高調波発生機器の最大稼働率
$k=k1・k2・k3$
$k1$:インバータの実負荷時入力を考慮した係数
$k2$:運転方式による係数(連続運転、間欠運転など)
$k3$:システムによる補正係数
一般事務庁舎の場合の最大稼働率については下記表のによる。
設備種類 | 機器容量区分 | 係数 | 最大稼働率 | ||
k1 | k2 | k3 | k | ||
空調機器 | 200kW以下 | 0.55 | 1.00 | 1.00 | 0.55 |
200kW超過 | 0.60 | 1.00 | 1.00 | 0.60 | |
衛生ポンプ | - | 0.60 | 0.50 | 1.00 | 0.30 |
エレベーター | - | - | - | - | 0.25 |
冷凍冷蔵機器 | 50kW以下 | 0.60 | 1.00 | 1.00 | 0.60 |
UPS(6パルス) | 200kW以下 | 0.60 | 1.00 | 1.00 | 0.60 |
表 ビル設備用インバータ等の稼働率
ウ 高圧で受電する場合の直列リアクトル付コンデンサによる低減係数
ⅰ)高圧受電ビル設備(一般事務庁舎)の場合、$k=0.7$
ⅱ)進相コンデンサが全て直列リアクトル付
各次数高調波電流 | 低減係数 γn |
---|---|
第5次高調波 | γ5=0.7 |
第7次高調波 | γ7=0.9 |
上記以外次数高調波 | γn=1 |
各次数高調波流出電流値が上限値以下であれば検討終了となる。
手順④高調波流出抑制対策
①機器への分流による高調波電流の低減効果
②直列リアクトル付進相コンデンサへの流入による高調波電流の低減効果
③抑制対策(多パルス化、フィルタ設置等)
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